司書転売事件発覚前に共産党アンケートはなぜ実施されたのか考察してみた
産経が例の事件の後追いをしている。
司書転売事件 背景に低賃金・生活苦 新潟
産経新聞 6月12日(水)7時55分配信新潟市立学校に勤務する図書館司書のうち、非常勤や臨時職員は「低賃金」「生活が苦しい」と感じていることが11日、共産党新潟市議団のアンケートで分かった。5月末に発覚した市立小須戸中学校の学校図書転売事件の背景には低賃金も無関係ではないと指摘し、阿部愛子教育長に、待遇改善などを申し入れた。阿部教育長は「専門職でありながら賃金が低いと思っている。検討していきたい」と答えた。
記事によれば、アンケートは、事件発覚前の今年4月から5月に実施されたという。
なぜ、共産党新潟市議団が事件発覚前にアンケートを実施していたのかは記載されていないが、ここ最近の図書館の民間委託や、それにともなう司書の異動が関係していると思われる。
図書館の民間委託については、佐賀県武雄市でのツタヤへの委託にはじまり、宮城県多賀城市が検討中と報じられている。
図書館の民間委託の問題点
図書館というと、「本を貸し出してくれるところ」と思うかもしれないが、それは正しくない。
大元をたどれば、戦前の反省に行き着く。国民の思想信条を画一的に管理した戦前、戦争へと突き進むことになった。そこで、現在の日本国憲法は、基本的人権の中でも、国民の思想信条の自由を最優先にしている。これを保証するために、学問の自由が保障され、教育基本法を中心に、教育行政への戒めと、教育の自由が確立されることとなる。これをうけた図書館法において、国民の知の結晶としての図書館の設置が要請されているのだ。
図書館が、ただ本を貸してくれるところなのではない。そんな図書館運営をしている行政は、この憲法、教育基本法、図書館法の基本をふまえずに運営していると指摘しておきたい。
新潟市の図書館はいま
新潟市は、ご多分に漏れず「行政改革」に熱心だ。各種施設を民間委託や指定管理者制度に出しまくっている。ちょっと話しはずれるが、正直驚いたのは、小中学生の給食にまで民間委託を行ったときだ。給食に対する責任は行政が負うと法律で決められているので、献立は新潟市が決め、材料は新潟市が買い求め、それを民間業者に手渡し、民間業者が食べられる状態にして、それを新潟市(の学校)に手渡す。なんとも、ばかばかしい。
図書館では、正職員は中心の図書館に集積し、末端の図書館は臨時職員に任せるという方法を採り始めていた。広域合併によって大きくなった新潟市の周辺地域の図書館は、どんどんと臨時職員に置き換えられるということが起きていたところだ。そのなかで、当然、学校の図書館に配置されている司書も対象となった。学校の司書は、臨時へと置き換わることになった。昼休み、放課後とのわずかばかりしか子どもたちと接しない臨時司書。そして、教科指導を受け持ち多忙を極める「司書教諭」。こうやって、学校の図書館は、ただの本棚へと近づいていっていた。
このままいけば、本棚と化した図書館を廃館とし、もうけの出る中央の図書館は委託の対象となったことだろう。
そこに、今回の事件である。
共産党新潟市議団が、どのようなアンケート結果をもっているのか全容を記事からは伺えないが、十分に活用し、図書館を図書館法が求める本来の姿へ戻してもらいたい。
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